みなさん、こんにちは撮れ高映像部の西川です。
みなさん、こんにちは。撮れ高映像部の西川です。今回は、私のライフワークとも言える「カメラ」の世界についてお話しさせていただきます。
近年、カメラ機材は目覚ましい進化を遂げていますが、その中で私が今あえて魅了されているのが「オールドレンズ」です。デジタル全盛の今だからこそ、あえて時計の針を戻すような選択をすること。今回は、私が普段から愛用している一本に焦点を当て、その奥深い魅力をご紹介します。
デジタルカメラの進化と、あえて「不完全さ」を求める理由
現代のデジタルカメラやスマートフォンの進化には目を見張るものがあります。高精度なオートフォーカス、強力な手ブレ補正、そしてAIによる高度な画像処理。今や、誰でもシャッターを押すだけで失敗のない、驚くほど高精細で正確な写真を撮ることができる時代になりました。しかし、完璧すぎるがゆえの物足りなさをどこかで感じている人も多いのではないでしょうか。
近年、若年層を中心にフィルムカメラや古いコンパクトデジタルカメラ(コンデジ)が再評価されているのは、単なるレトロブームだけが理由ではないと感じています。そこにあるのは、現代の最新レンズでは設計段階で排除されてしまう「不完全さ」や、計算では導き出せない「偶然性」への憧憬です。逆光で発生するフレア、周辺光量の低下、あるいは独特の色の滲み。現代の基準では「収差(エラー)」とされるこうした要素こそが、写真に情緒や物語性を与えてくれる。そのことに、多くの人が気づき始めているのかもしれません。
今回紹介するレンズ:PENTAX smc TAKUMAR 55mm F1.8


オールドレンズの入門として最も有名なのは、通称「アトムレンズ」としても知られる「Super-Takumar」でしょう。しかし、私が今回ご紹介するのは、その後継モデルにあたる「PENTAX smc TAKUMAR 55mm F1.8」です。タクマーシリーズは、1960年代から70年代にかけて旭光学(現リコーイメージング・PENTAX)が製造していた歴史あるレンズ群です。
名称にある「smc」とは「スーパー・マルチ・コーティング」の略称です。当時としては画期的だった多層膜コーティングが施されています。このコーティングのおかげで、オールドレンズ特有の柔らかさを残しつつも、発色が非常に良好で、現代のレンズに近いシャープな描写を両立しているのが特徴です。50年以上前の設計でありながら、現代のフルサイズセンサーに装着してもなお、一線級の解像感を維持している点には、当時の技術者の執念すら感じさせられます。数千円から一万円台という手頃な価格設定も相まって、まさに「一生モノ」の入り口にふさわしい一本です。
Sony α7C IIとの組み合わせ:新旧融合の愉しみ
私がこのレンズを組み合わせて使っているボディは、Sonyの「α7C II」です。最新のフルサイズセンサーを搭載しながらも非常にコンパクトで、機動力に優れた現代の名機です。この最新のミラーレスカメラに50年前のレンズを装着するには、「M42マウントアダプター」が必要になります。私はK&F Concept製のアダプターを介して使用していますが、装着した際のルックスは、現代的なミニマリズムと昭和の無骨な金属質感が融合し、唯一無二の佇まいを見せます。
もちろん、レンズに電子接点はないため、オートフォーカスは一切効きません。絞りもピント合わせもすべて自分の指先で行うマニュアル操作になります。しかし、この「自分の手で機材を操っている感覚」こそが、撮影という行為を特別な体験に変えてくれます。最新の機材で効率的に記録するのではなく、一枚の写真を丁寧に「構築」していく感覚。このひと手間が、シャッターを切る瞬間をより濃密で、記憶に残るものにしてくれるのです。

描写の美学:光を捉え、空気を描く
smc TAKUMAR 55mm F1.8の描写を一言で表すなら、「芯のある柔らかさ」です。ピント面は驚くほどシャープでありながら、そこから背景へ流れるボケ味はどこか優しく、被写体を包み込むような空気感を纏います。特にポートレートやスナップにおいて、このレンズが描き出す「温もり」は、最新のレンズではなかなか再現できないものです。
特筆すべきは光の表現です。強い光源を画面に入れると、現代のレンズでは徹底的に抑制されるフレアやゴーストが、美しい光の輪やシャワーとなって現れます。これは計算して出せるものではなく、その時の光の角度や強さによって刻一刻と変化する、まさに一期一会の表現です。それでいて、順光の状態では驚くほどヌケの良い、現代的な写りも見せてくれる。この二面性こそが、このレンズを使い続ける最大の理由かもしれません。50年前の技術者が意図した以上の美しさが、現代のデジタルセンサーによって引き出されている。そう考えると、非常にロマンを感じます。

実際に使って感じたこと:撮影テンポが変える、心の余白
このレンズを使い始めてから、私自身の撮影スタイルに大きな変化がありました。それは「撮影のテンポが圧倒的にゆっくりになった」ということです。オートフォーカスなら一瞬で終わるピント合わせに、数秒、あるいは十数秒を費やす。ファインダー越しに被写体を見つめ、ピントの山を慎重に探る。そのプロセスの中で、「なぜ自分は今、これを撮ろうとしているのか」「この光をどう残したいのか」という問いと自然に向き合うことになります。
失敗も少なくありません。ピントをわずかに外したり、光が入りすぎて真っ白になったりすることもあります。しかし、だからこそ納得の一枚が撮れた時の喜びは、最新レンズで撮った時の何倍も大きく、その写真に対する愛着もひとしおです。利便性と引き換えに手に入れたのは、被写体との深い対話の時間でした。仕事での撮影は「確実性」が求められますが、趣味の撮影くらいは、こうした「遠回り」を楽しんでもいいのではないでしょうか。
おわりに
今回は、オールドレンズの世界への入り口として、smc TAKUMAR 55mm F1.8をご紹介しました。解像度や収差の補正といったスペック的な指標だけで言えば、最新のレンズには到底及びません。しかし、写真の本質が「記録」だけでなく「表現」にあるとするならば、このレンズが持つ豊かな個性は何物にも代えがたい武器になります。
便利すぎる世の中で、あえて手間をかけること。その不自由さを楽しむ余裕が、日常の景色を少しだけドラマチックに変えてくれるはずです。私自身、このレンズのポテンシャルをまだ完全に引き出せているわけではありません。構造や歴史についても、もっと深く勉強し、このレンズでしか撮れない世界を探求していきたいと考えています。もし皆さんの手元に古いレンズがあれば、ぜひ一度、現代のカメラに装着して覗いてみてください。そこには、忘れかけていた「撮る楽しさ」の原点が待っているはずです。
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