映像技術解説

甲子園のテレビカメラに「すだれ」が掛かっている理由とは〜真夏の高校野球中継を支える、意外とアナログな暑さ対策

こんにちは。撮れ高デスクスタッフです。

夏の風物詩といえば「夏の甲子園」。

高校球児たちの熱戦をテレビで見ていると、グラウンドだけでなく、バックネット裏や一塁側、三塁側などに設置されたテレビ中継用カメラが映り込むことがあります。映像関係の仕事をしている人なら、一度は気になったことがあるかもしれません。

「テレビカメラの上に掛かっている、すだれのようなものは何?」

最新の放送用テレビカメラと、日本で昔から使われている「すだれ・よしず」。

一見すると不思議な組み合わせですが、実はテレビ中継を安定して行うための重要な役割があります。

甲子園のテレビカメラを覆う「すだれ」の正体

テレビで甲子園を見ていると、カメラの上にすだれのようなものが設置されていることがあります。一般的には「すだれ」と呼びたくなる見た目ですが、野球中継の暑さ対策では「よしず」という表現も使われています。その大きな目的は、強烈な直射日光からテレビカメラを守ることです。

放送用テレビカメラメーカーの池上通信機が紹介している高校野球中継の事例では、真夏の屋外に設置されたカメラは、直射日光を何時間も受けることで黒い筐体が非常に高温になると説明されています。その対策として、カメラの上によしずを掛け、さらに下から扇風機を使用して熱対策を行う方法が紹介されています。

甲子園に限らず、真夏の高校野球中継では、こうした非常にアナログな方法が実際の撮影現場で活躍しているのです。

なぜテレビカメラは暑さ対策が必要なのか

夏の野球場は、テレビ中継機材にとって非常に厳しい環境です。問題になるのは気温だけではありません。強烈な太陽光がカメラ本体やレンズに何時間も直接当たり続けます。

放送用テレビカメラは黒い筐体のものが多く、直射日光を受け続ければ本体の温度も上昇します。テレビカメラの内部には撮像素子や映像処理回路、電源関係など、さまざまな電子部品が搭載されています。電子機器にとって過度な熱は大敵です。

さらに野球中継の場合、カメラは短時間だけ使用するわけではありません。試合開始前からセッティングや調整を行い、本番が始まれば試合終了まで撮影を続けます。高校野球では一日に複数試合が行われる日もあります。そのため、カメラポジションによっては長時間にわたって炎天下で機材を稼働させることになります。

そこで重要になるのが、できるだけカメラに直射日光を当てないというシンプルな対策なのです。

なぜ布やシートではなく「よしず」なのか

「日光を遮るだけなら、普通の布でもいいのでは?」と思うかもしれません。しかし、よしずには夏の屋外撮影に適した特徴があります。それが、日差しを遮りながら空気を通すことができる構造です。

カメラ全体を通気性の低い素材で覆ってしまうと、直射日光は防げても、今度は周囲に熱がこもる可能性があります。よしずには隙間があるため、日陰を作りながら空気を完全に遮断しません。

さらに高校野球中継の現場では、よしずと扇風機を組み合わせて使用する事例もあります。

日差しを遮る。そして風を送る。

非常にシンプルですが、屋外撮影では合理的な暑さ対策です。

最新の放送用カメラを昔ながらの道具が守る

ここが映像制作の面白いところです。

現在のスポーツ中継では、高精細な4K映像やハイスピード撮影など、非常に高度な映像技術が使用されています。野球中継では、遠く離れた場所から選手を大きく撮影する大型レンズや、スローモーション映像を撮影するためのカメラなど、さまざまな機材が使用されます。

ところが、そんな最新の放送機材を真夏の太陽から守っているものの一つが、昔ながらの「よしず」です。高価で高度な放送機材だからといって、すべてを最新技術だけで解決するわけではありません。撮影現場では、その場所、その日の天候、その機材に合わせて、最も確実な方法を選びます。

最新技術とアナログな工夫が共存している。

これもテレビ中継の現場ならではの光景です。

野球中継は「カメラを止められない」

野球中継は基本的に生放送です。

ホームランが出る瞬間。

ファインプレーが生まれる瞬間。

ランナーがホームへ突入する瞬間。

そして試合を決める最後の一球。

どれも一度しかありません。

ドラマやCM撮影のように「もう一度お願いします」というわけにはいきません。そのため、スポーツ中継ではカメラマンの撮影技術だけでなく、機材を最後まで安定して稼働させることも非常に重要になります。

カメラのセッティング、ケーブル処理、電源管理、雨対策、風対策、そして暑さ対策。

テレビ画面には映らないこうした準備の積み重ねによって、生中継は成り立っています。

カメラマンにとっても過酷な夏の撮影

もちろん、暑さと戦っているのはテレビカメラだけではありません。炎天下で撮影するカメラマンやカメラアシスタントにとっても、夏の野球中継は過酷な現場です。

カメラポジションによっては、長時間同じ場所で撮影を続けることになります。しかも野球の場合、いつ重要なプレーが起こるか分かりません。暑いからといって集中力を切らすことはできません。

ピッチャー、バッター、ランナー、守備位置などを確認しながら、次に何が起こるのかを予測してカメラを操作します。スポーツ中継のカメラマンには、カメラ操作の技術だけではなく、競技への理解や集中力も求められます。

「撮る」だけではないテレビ中継の技術

映像制作の仕事というと、「カメラを上手に操作すること」が最初に思い浮かぶかもしれません。しかし、実際の現場ではそれだけではありません。

雨が降りそうならレインカバーを準備する。

強風なら機材の安全を確認する。

ケーブルを人が通る場所に敷設するなら、事故が起きないように養生する。

真夏の屋外なら、カメラが高温にならないように対策する。

こうした準備も含めて撮影技術です。

良いカメラマンや技術スタッフほど、トラブルが起きてから対応するのではなく、

どうすればトラブルを起こさず最後まで撮影できるか

を考えています。

甲子園のテレビカメラに掛けられている「すだれ・よしず」は、そんなテレビ中継の裏側を象徴するアイテムの一つと言えるでしょう。

甲子園を見るときはテレビカメラにも注目

次に夏の甲子園を見る機会があったら、ぜひグラウンドだけでなくテレビカメラにも注目してみてください。

炎天下のカメラの上に掛けられた「よしず」。

一見すると素朴な暑さ対策ですが、その目的は直射日光から機材を守り、安定したテレビ中継を続けることにあります。

私たちがテレビで何気なく見ている一球、一打、一瞬の表情。

その映像の裏側には、カメラマンをはじめとする多くの技術スタッフと、さまざまな現場の工夫があります。

株式会社撮れ高では、ライブ、音楽番組、イベントなど、さまざまな映像制作・撮影現場に携わっています。カメラマンやカメラアシスタントの仕事は、単にカメラを操作するだけではありません。天候、気温、撮影場所、機材の状態などを考えながら、確実に撮影できる環境を作る」ことも大切な仕事です。

映像業界やテレビ・ライブ撮影の仕事に興味がある方は、ぜひ株式会社撮れ高の採用情報もチェックしてみてください。

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